同じことをしている

彼氏におつかいを頼んだけれど、スーパーの閉店に間に合わないとラインがきた。

23:00までだから間に合うよ、とは送らず、わかったよ(^-^)とも送らずに、通知だけ読んで帰りを待った。

買いもの行けなくてごめんね。

ううん、いいよ、ごはん食べよう。

ごめんねと言ってくれるだけまだ優しい。間に合うと教えなかったわたしに買いもののクエストが回ってくる。

朝から夜まで外にいて、帰りに買いものしてこいなんて、めんどくさくないわけが無い。そこまで汲んだ結果の未読無視。

そしてまた遊びにくる、コントロールできない気持ちの波。

あー今日も、ふてくされてしまったなあ。毎日楽しく過ごすのは死にたくなるほど大変だ。

今日もお母さんから逃げる夢を見た。起きたあとはずっと不安だ。

不安になると口が寂しくなる。目の前にあるお菓子を無心で食べる。タバコもばかみたいに減っていく。

口の寂しさと自分の寂しさは比例している、と気づいた。そういえば前の家では、夜な夜な外に出るのも厭わないくらい、お菓子を買っては食べていた。同居人も犬も居たのに、今よりずっと寂しかったのだ。

口の寂しさには飴が効果的なのだが、噛んだ飴の甘い刃に口内を滅多打ちされた時は、さすがに寂しさも加速する。一種の自傷行為な気もする。

人と住むのは向いてないのかもしれない。でも、誰かと住んでないとすぐに死んでしまう気がする。他人と住むと、自分が死んで迷惑をかけるほうが、生きていくよりつらい。生きてたほうがまし理論。そうやって東京で生きてる気がする。

副業で稼いだお金はとことん自分のために使うと決めた。ほしい服、化粧品、お菓子だって、買えるはずなのに、どうしてだろう、生活の二文字で前が見えなくなる。

生きていこうとしている。こんなに日中死にたいと思いながら。外に洗濯物を干しながら、いま外に出ている人は、外が怖くないんだろうなあと機械のように毎回思う。閉じ込められたお姫さまの目線で、違う視点から外を羨む。

最近、浮気する人の気持ちがわかってきた。寂しいと誰かに会いたくなるのはいつごろからのプログラミングなんだろう。もう浮気できる歳でも人間関係でもないから、ただただお菓子と浮気する。

今日は逃げる夢見たくないから、早く起きたい。

夜が襲う

彼氏が寝たあとがこわい。

彼氏が。ではなくて、彼氏の意識がいなくなった環境に取り残されている状況が、こわい。

急にひとりにされて、カーテンを抜けて想像の中の社会が脅かしてくる。

これからどうするんだろう。お金もつのかな。また仕事が待ってる。また通勤が待ってる。通勤シュミレーターが勝手に起動する。苦しくない程度の満員。普通を装えば、平気を装えば、通行人役のエキストラを真面目に演じれば、顔を特定できない小物を纏えば、気持ちは後ろからおずおずとついてきて、身体はともかく進む。都会っぽい音楽を聴いて、影のように歩く。わたし、普通の人の役。

アニメに出てくるような、ボディーガードのような、執事のような、そういう人が身近にいる身分じゃないのがいたたまれる。誰かが守ってくれないと、最寄り駅から外へは辛い。

むかし、どうしても学校に行きたくなかったときに、お母さんが「ずっと心配しててあげるから(学校行け)」と言われたことがある。そういうことだったんだろうけど、そういうことじゃない。ついに大泣きして、大声で「行かない」とその場にいた両親に伝えた。制服までは、着れていた。

中学生のときも、卒業間近で何度もお母さんに無断でずる休みをした。ついに学校に連絡すらもしなくなった日、とうとうバレて、学校へ向かった。

こわいで密かに有名だった担任の先生は、わたしを見て、優しく「こら」と笑った。わたしが欲しかったのはそれだった。許されるのはつらいことだとのちに読む漫画で学んだけど、そのときは許されることがわたしの救いだった。

わからないんだよね、休むことが悪だと過ごしてきた世代には。休むことが悪だと信じてやまないお母さんには。

今日、お母さんから逃げる夢を見た気がする。一緒に住んでたころよりは、お母さんも丸くなった。正直にメールすれば、絵文字はないけれど、わかったような文章が返ってくる。

いま、お金がなくて通信のお金が払えないことを正直に話していいのかな。ローンでお金を借りていることは話すべきなのかな。あんなに攻略してきた相手なのに、いまだに読めないところがある。

彼氏の家庭に産まれてたら、わたしはこんなんじゃなかったのかな。理想的な家庭。母性と父性が乱れていない家庭。いつまでも家族に囚われている。家族が敵だなんて、笑えない皮肉だ。

自分で稼いで買ったゲーム機すら、責められる対象に見える。いつまでもお母さんに囚われている。

早く刑期が終わってほしい。終身刑なら、早く殺してほしい。

ちゃんとブスだ。

中途半端にブスだ。

ちっちゃいときは可愛かったのだ。保育園のときの写真で確認できる。

カワイイはつくれると聞いたので日々カワイイをこねくり回しているのだけど、ちゃんと見るとブスだ。つくれないじゃんか。

他人からの「かわいい」が信じられない。なんなら引いてる。え こいつマジか...ってなる。

わたしの地元はマウンティング文化が根強く浸透しているので、スクールカーストはおろか住民カーストすら構成されているクソみたいな町なんだけれど、小学生のとき、わたしよりカーストが上だったらしい女の子が、急にキスまで数センチくらいに顔を近づけてきて、もはや恐怖すら感じられないくらいだったんだけど、そのあと言われた言葉が「目だけはかわいいね」だった。

これまた小学生のとき、お母さんと姉ちゃんと銭湯に行ったとき、お風呂からあがって身体を拭いてると、ふたりが少し離れたところからわたしを見ながら「脚は長いよね」とコソコソ話していた。

これでわたしが「わたしのチャームポイントは目!♡そして脚が長いのがまあ自慢かなっ(*^^*)」とアイデンティティのプロフィール欄に保存できる性格だったらよかったんだろうけど、気持ちいいくらいに真逆に考える性格を構成してしまった。

いや、目、奥二重やし。二重コスメを使いはじめたのが大学4年の最後らへんだったので、それまで付き合ってきた彼氏たちには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。もっとかわいくなれるはずでした。

脚は正直ほんとにわからない。男の人が好きな脚であるっぽいんだけど、わたしが好きな脚ではないのでですね...ってなる。ずっと立ってると調子いいときの2倍ぐらいにふくらはぎがむくれあがるし、ほんとにただただむくむ。最近はほくろが増えてきた。何しても細いままをキープできる性能の脚がよかった。でも、剃毛後の触り心地は自負しています。

でもそんなの、付き合ってる人しか触らないし、付き合ってない人に触らせるために、ムダ毛処理してるわけじゃないし。でもわたしの取り柄が剃毛後の脚の触り心地しかないから、片想い中は如何にしてセフレにならないようにここをアピールするかでいつも悩む。(結局アピールはできない)

とにかく顔 顔 顔

顔がどうしてもコンプレックスだ。

どうして顔の皮膚だけ荒れ地なんだろう。

まぶた多すぎやろ。

笑うともっこり出てくるほっぺた。汚い。

エラ。四角い。ゲームキューブじゃねーか。

くちびる。ぶ厚い。可愛くないぶ厚さだ。ステーキなら高い値段がつくだろうな。

中途半端なつり目も気持ち悪い。なんていうか、そっちの人みたい。(お察しください)

だから、カラコンする。ふたえにする。シェーディングする。カバー力高いベースメイクにする。信じられないくらい長さで下にアイラインを伸ばす。

飾ったブスだ。

自分で見たときはかわいいのに。写真に撮られると信じられないくらいにブスだ。最近はお金を払ってもらって写真を撮ってもらうことがあるので、ほんとに申し訳ない。可愛く撮れるまで撮らせてあげたいし、なんならわたしがSNOWで盛りまくった写真データを渡したい。

悲しいな。最近は自分でかわいく見えてても、結局他人から見たら化粧したブスなだけなので、おしゃれして外に出歩くのがとても恥ずかしい。はりきったブス。わたしが嫌いな人間。

この前見たオカマアイドルさんがめちゃくちゃかわいかった。めっちゃ身長高いけど、たれ目で、くちびるがキュッとしてて、ほっぺがほわんと色づいてて、性別変わってあげたかった。ほんとに、女子だった。

お化粧した男性よりブス。

好きなアーティストさんのすっぴんを図らずも見たことがあった。ステージメイクからはほど遠い顔だったけど、ブスではなかった。そして、ステージメイクではやっぱりすんげえ美しかった。美人なんだ、あの人は。まわりのダンサーさんのすっぴんは正直ブスだったけど、ステージメイクではやっぱりかわいかった。すげえ。美人なんだ。メイクでちゃんとかわいくなれる人たちだった。

メイクでもかわいくならないブス。

お前その顔で配信アイドルやってんのか!?みたいなツイートにたまに出遭う。なんかもうわたしだったら恥ずかしくて死ぬレベル。でもその女の子たちにもファンがいて、アイドル活動もできてるみたいだ(ツイートしか見てないから予測だけど)。いいなあ、その顔でお金もらえるんだ。

メイクしてもかわいくないから自分からお金もらいに行けないブス。

お風呂が嫌いな理由がもうひとつあって、すっぴんの自分を見ないといけないからだ。ブス。ブスのためにスキンケアをして、ブスのために高いヘアミルクを髪に伸ばす。彼氏が寝てるベッドにブスがすべり込む。申し訳ない。メイクを落とさないで寝ることなんてザラだ。わたしが彼氏ならブスとシングルベッドで寝たくねーよ。

肌荒れ、復活してきたなあ。わたし、いつ化けの皮剥がしていいんだろう。

はりきったブスのお面をつけたブスは今日も寝れない。

仕事仕事仕事

金がない。ずばり。

それは副業で必ず会うお客さんにバレてしまったようで「生活苦しいの?」と聞かれてほんとに苦しいと冗談ぽく話した。

金がない。なんでかって、仕事が安定しない。

いや、本業はもうすぐ就いて2年が経ちそうなんだけど、家が近かったころから行きたくないし休むし、引越して片道の時間も交通費も3倍になってから余計に行きたくないし休むから。

どれだけシフト入れてもらっても、休む。もう仕事が合ってないなんて、面接が終わったときからわかってたはずなのに。

何してるんだろう。お母さんの言いなりがいやで、中学生からの目標が"家を出る"で、それが大学進学で、やっと家を出て、大学で楽しくやってたら、今度は社会が目の前にやってきて、でもわたしには目標がもうなくて、結局バスで8時間かかる地元でずっと待ってるお母さんに言われた仕事をやってる。

お母さんの言いなりになりたくないのに、今では自分からお母さんの意図を汲んでる。生活費もらってるし。当たり前かもしれない。何してるんだろう。わからなくなる。

お母さんの人生じゃないのよ、と言われた。そうなんだ。お母さんの人生だと思ってた。思えばちっちゃいときからお母さんの理想を兄弟みんなが背負わされてた。兄ちゃんは昔からゲームが得意だったから、上手に逃げて今ではつかずはなれずの距離で、だけど完全に遮断して生活してる。

姉ちゃんは、高校生の頃からやりたい放題だったから、お母さんのことを気にしてるふりして、今でも自分がやりたいように生きてるし、結局お金持ちとずるずる付き合ってるから、お金には困らないだろう。わたしに仕送り用の通帳が渡ったことが何よりの証拠だ。

わたしは。わたしは、ずっと上のふたりを見てきたから、お母さんの攻略にはきっと兄弟の誰より長けてる。ただずっとお母さんの攻略法しか学んでこなかったから、自分の、社会の攻略法がわからない。みんな、どうやって生きてるの。なんでみんなお仕事できるの。なんでみんな生活できるの。なんでみんな生きれるの。

中学生の頃から家を出るのが目標だとさっき書いたけど、もうひとつ目標がある。38歳で死ぬこと。これは中学二年生のとき、成人式で20歳になった自分に宛てた手紙を書いていて、内容なんて覚えてないまま成人式でもらったときに「あと半分ですね。」と偉そうに書いてあったので本気だ。今ではちょっと、自信がないけど。でも理想ではある。はやく死にたい。38歳には理由があって、太宰治が好きなわたしは、太宰治より長生きしたくないからだ。なんなら高校生のうちに死にたかったけど、高校生活はなんだかんだで楽しんでしまったしなあ。

この目標は最近後輩にしたことがあって、「なんで38歳なんですか」って聞かれたんだけど、"太宰治より長生きしたくないから"なんて中二病すぎて、「なんとなく」なんて便利な言葉ではぐらかしてしまった。むかし好きだった後輩にそんな話したくねえよ。わかってた片想いだった。

いまは楽しい。最寄り駅を出なければ。よく遊ぶ誰かと一緒だったら。だけどお風呂が嫌いなのは引っ越す前から変わらない。お風呂が苦手だ。時間がかかって疲れる。癒されることなんてない。あがったあとのスキンケアの時間と髪が乾くまでの時間を考えると憂うつだ。のろまなのかなあ。時間がかかる身体が迷惑だ。

やりたいことがある人がうらやましい。自分で思いつくんだもん。わたしがやりたいことなんて、家から出ないことと、服と化粧品がいっぱい買える制度がほしいだけだ。家は出ないけど。

楽しかった過去はどこに行ったんだろう。大学を卒業してからも、一緒についてきてくれると思ったのに。ついてきたのは、ちっちゃい頃から抱えてた劣等感と根拠のない自責だけだ。

誰のせいでもないらしい。家族のせいでも、わたしのせいでも。だからこそ、なおさらこの状況が曇って見えない。わたしのやりたいことはどこなんだろう。わたしがなりたいものはなんなんだろう。ちっちゃいときは、アイドルになりたかったなあ。小学生と、中学生のときは、小説家になりたかった。高校生のときは、ハロプロに入りたかった。お寺にこっそりお願いしたこともあった。大学生のときは、イラストレーターになりたかったし、ビレバンでPOPが書きたかった。とにかく絵が描きたかった。サークルでポスター作らせてもらえたり、文化祭の装飾のお手伝いをやらせてもらったり、それこそ文化祭でサークルの会場の装飾の監督みたいなのもやらせてもらえて、めっちゃ嬉しかったな。わたしのセンスでいいんだって、わたしのセンスっていいんだって、みんなが証明してくれた。

この中で、お母さんが乗り気になってくれたのは、小説家だけ。というより、小説家しか口に出せなかった。アイドルなんて、イラストレーターなんて、やりたいなんて言ったら、ごちゃごちゃに怒られて、あー攻略失敗ってなるのが見えてたから。

だから、アイドルやってる人が、イラストレーターやってる人が、とてつもなくまぶしい。ステージに立ってる人が、顔を出して印刷物に載ってる人が、とてつもなくまぶしい。あーこの人たちは、親の応援を受けてるんだって、理解のある家族に属してる人たちなんだって、よかったねって、嫌味じゃなくて、やりたいことがやれる運命にいてくれてよかったって思う。

わたしは。わたしは、お母さんに許されない。きっと。泣いて電話しても、今の仕事をやりながらにしなさいって、きっと言われる。わたしもそのほうがいいと思う。でも、わたしの中身は、もう無理です。家を出たくないなんて、38歳で死にたいなんて、思ってる今のわたしの中身は、もう調理されすぎて、焦げ焦げだ。知らない人に怯えながら、後ろから通り過ぎる自転車にビクつきながら、家に入るときに後ろを気にしながら、毎日生きてるわたしには、もう、無駄な寿命しかない。早く死にたいんだけどな。世間体を気にしまくるお母さんが生きているうちは、どれだけ死にたくても、とりあえず生きてなきゃいけないんだ。お母さんが死んだら、わたしも死ねるのに。でもこれじゃ、ほんとにお母さんのための人生だなあ。

年内で本業を辞めようとしている。お母さんから逃げるための1歩にしようとしている。なんなら副業も辞めたい。なんだか怖い組織になってしまったし。

そしたらわたし、やりたかった"家から出ない"ができる。ああ、そういうことなのかな。でもそしたら?

金がない。